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品格ある風景
栗生明の恩師、穂積信夫先生の著書「エーロ・サーリネン」に印象的な一節があります。
「・・・フィンランドの自然児であったエリエルは、絵を描くのが好きであった。それも、屋外に出ての写生である。自然を写生するうちに、樹や花の美が目に映ったが、しかしそれだけではない。風景を描こうとすれば、家が登場してくるのである。家が自然と一体になり、家があることで風景になることを会得した少年の心のなかに、家が美しいものであるという印象をもったとしても、不思議ではない。・・・」
「建築があることで風景になる」
近代建築が軽んじていた視点がここにあります。建築は人間というフィルターを通してかたちづくる風景のひとつの要素だと考えられます。フィジカルな視覚環境を表現する「景観」と言う言葉と比較すると、「風景」は人間の意識や記憶にかかわり、文学的ニュアンスをもって語られます。
手つかずの自然より、たとえ僅かでも人間の営みを読み取れる風景に人間はより強く共感すると言えるでしょう。こう考えると建築の責任は重いと言わざるを得ません。
わたしたちは建築や環境を計画することで「品格ある美しい風景」を作ることを目指しています。
つづき:環境の文脈
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